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七つの塔 ~ スルタン・オスマン殺人事件

Author: エルダル・K

$6.84

スルタン・オスマン殺人事件

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Description

〈あらすじ〉

オスマン帝国統治下のイスタンブール。時の皇帝はムラド四世。オスマン帝国第一七代スルタンは、この時、いまだ一九歳であった。彼の足元は揺らいでいた。帝国の守護者を名乗る、オスマン帝国軍が数度にわたり立ち上がり、政治や人事に不満を唱えていたのだ。それが原因で、宮殿内から一人、また一人と彼の側に立つ人物が消されてゆく。さらに、実母である皇太后マフペイケル・キョセム・スルタンが摂政として実権を握っており、若きスルタンは徐々に追い詰められつつあった。

そんな時代の話である。

西暦1632年5月17日の夜のこと。その日は、若芽散らしの嵐と呼ばれる春の最後の嵐が吹いていた。イスタンブールをぐるりと囲む、ローマ時代のテオドシウス帝の城壁はいまだ健在で、各門には歩哨が立つ。門の中でも最も重要なのが、城壁の最南端、マルマラ海沿いに位置する七つの塔(イェディクレ)城砦の黄金の門(アルトゥン・カプ)である。かつてのローマ街道の起点に当たり、多くのビザンチン皇帝の凱旋門となり、外国の大使を迎える場ともなった。オスマン帝国下では城砦として増築され、重要人物が幽閉される、泣く子も黙る牢獄となっている。

今、黄金の門のすぐ外側の小さな小屋に腰を落ち着けた、この門を守る一隊の隊長は、オスマン帝国軍の特殊部隊イェニチェリのヒュセインという。かつては皇帝の近衛兵であり、その堂々たる体躯に似合わず、繊細な詩を書く詩人でもある。彼と差し向かいに座るのは、学者のキャーティプ・チェレビ。智は善にして全である、と信じて疑わぬ生真面目な男。二人はこうして、夜に黄金の門の外に揃って座り、チェスを指しながらその時々のことを話し合うのが常であった。

その夜、二人の口に上ったのはムラド四世が陥った窮地のこと。文官と武官である二人は、イェニチェリの決起や、スルタンの側近の裏切りについて、立場の違いから議論を交わしていた。嵐は強さを増し、二人の議論とチェスの勝負も進んでいく。その時、ヒュセインが人の気配に気づいた。嵐に打たれて現れたのは、一人の若い村人と、スーフィ・ジェルヴェティ教団の修道僧(ダルビッシュ)であった。ヒュセインは彼らの雨宿りを許可し、小屋へと招き入れる。そして、チェスの勝負と議論が再開された。ムラド四世の現状は、その異母兄オスマン二世の悲劇を思い起こさせた。ちょうど十年前、兵士たちの決起によって、スルタンの座から引き摺り下ろされ、ここイェディクレで殺害されたオスマン二世の悲劇を。ヒュセインとキャーティプがそれぞれの立場から議論を交わす中、突然、横やりが入った。若者がこう言ったのだ。

「スルタン・オスマンを殺したのは、誰なのですか?」

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